こだわりの素材
最近はマイクロプラスチック問題をはじめ、地球環境の悪化を防ごうと様々な取り組みがされています。
私ども繊維業界も環境負荷の少ない素材、生産・加工方法を製造の立場で行っています。
今回は弊社が今後取り組んでいく事についてご紹介します。
皆さんは羽毛布団やダウンジャケットをお使いでしょうか。
最近は、資源ステーションで衣類の回収が盛んに行われていますが、
布団やダウンジャケットは対象外になっています。
その為、古くなったものや破れてしまったものは各市町村の粗大ごみとして処理しているのではないでしょうか。
これは住んでいる治自体により違いますが、年に何回の決められた日に無料回収に出すか、
有償で回収してもらうかになりますが、行先はすべて焼却場になります。
これをリサイクルできるところがあります。
弊社の取引先で三重県にある河田フェザーの工場では新しい羽毛の洗浄を行っていますが、
近年は世界的に羽毛の需要が急激に増え、特に新興国で多く使われる様になりました。
羽毛はもともとアヒルやガチョウを食用に調理する時にでる副産物になります。
消費量が圧倒的に多いのが北京ダックで有名な中国です。
中国国内でどんどん需要が伸び日本向けの羽毛確保が難しくなってきているのが現状です。
そこで目を付けたのが焼却処分される羽毛布団とダウンジャケットです。
現在は三重県では社会福祉協議会や治自体が中心となって回収をしています。
その活動に刺激され、一部の百貨店も協力して店頭で回収をするようになりました。
また、衣料や寝具の販売メーカーなどと協力し「グリーンダウンプロジェクト」を設立し、
羽毛を再利用する仕組み作りに取り組んでいます。
もちろん、弊社も参画しています。
回収された羽毛布団やダウンジャケットはどのようになるか簡単に説明します。
①倉庫内でダウンとフェザーの混率で布団を層別します。
②一枚一枚手作業で側地を切り、中身の羽毛を取りだします。
③取り出した羽毛を洗浄・乾燥・選別します。
④リサイクル羽毛の完成です。
弊社は、リサイクル羽毛を使った商品をメーカーに提案し採用して頂いていますが、
羽毛布団の回収はしておりませんでした。
私達に出来る事で、まだやっていない回収を会社全体として取り組むことになりました。
各事業所に回収ボックスを設置して従業員の家族はもちろん
取引先や近隣の方々も交えて実施してまいります。
今後も製造の立場で少しでも地球環境問題に役立てる様
さまざまな省資源活動や省エネ活動に取り組んでまいります。
( 紡績部門 業務課 小笠原正人 )
6月20日、山形県鶴岡市のバイオベンチャーのスパイバー(関山和秀代表執行役)が開発した
クモ糸構造タンパク繊維(「ブリュード・プロテイン」)で作られたTシャツ
“Planetary Equilibrium Tee”がアウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」から
8月下旬に発売されることが発表されました。
この開発には、長谷虎紡績も 2014年3月から参画して参りました。
今から5年前に、スパイバーの関山和秀様にお会いし、石油由来ではない全く新しい素材とその可能性に魅力を感じ
何よりも世界をより良くしたいという関山様の熱い思いに共感し
弊社トップの英断でこの取り組みがスタート致しました。
そして、そのトップの思いをもとに会社全体が一体となり、実際の開発は若手社員が中心となり
そこにベテラン社員がサポートを行い、まさにものづくりの現場でも若手とベテランのハイブリッドが生まれました。
しかし、全く新しい素材ということもあり、ここまで来るまでには大きな困難もありました。
スパイバーから提供される素材も十分な量でないこともあり、限られた環境の中で何度も関係者が集い
最善の方法を見出しながら、この開発に繋がりました。
紡績という素材を自由に組み合わせ、ブレンドできるという技術は、この開発には必要不可欠なものでした。
素材にはそれぞれ様々な特性があります。時にはそれは欠点にもなります。
その欠点をどう補い、その良さを最大限に引き出すか。
まさに今回発売されたTシャツは、ブリュード・プロテインと天然のコットンのハイブリッドによる
夢のTシャツだと感じています。
日本の紡績は、ピーク時からその規模は数十分の1まで減りました。紡績だけに限らず
日本の繊維産業は厳しい環境にあるのも事実です。
しかし、日本の繊維産業の技術はまだまだ世界でも高い水準にあります。
事実、この製品化の陰には当社だけに限らず、染色工場など様々な国内の中小企業の技術力がありました。
こうした企業のハイブリッドにより、困難な開発を可能にすることができました。
今回のTシャツの発売は、素材のハイブリッド、製造現場の若手とベテランのハイブリッド
国内の繊維企業のハイブリッド、まさに日本の繊維の可能性を示した、素晴らしいものだと感じています。
そして私たちの新たな夢は、「素材で世界を変える」ことです。
この思いをこれからも忘れることなく、今後もあらたな挑戦をして行きたいと思います。
最後に、地元の若者にもこうした夢に向かって挑戦する企業があることを知ってもらい
地元への誇りと郷土愛を持ってもらうことが、トップの思いでもあり願いでもあります。
地方から日本を元気にする企業へ。まだまだ私たちの挑戦は続きます。
社長室 長谷享治
UTMF(ウルトラトレイル・マウントフジ)は2012年から始まった、山梨県・静香県をまたいで開催される
トレイルランニングのウルトラマラソンレースです。
総距離は約100マイル(160㎞)、累積標高差は約8,000m。
今年も世界中から2,000名ものランナーが富士山の麓に集いました。
レース初日は雨が降り、終盤には一部降雪もあり非常に厳しいレースとなりました。
私たち長谷虎グループもこのレースをサポートさせて頂いております。
レースのスタートとゴール地点には、私たちグループのオリジナル素材である「光電子®」ブースを出展し
インスタをフォローして頂いた方に、「光電子®」オリジナルグッズを配布させて頂きました。
ここで、私たちのユニークな素材「光電子®」について少し紹介をさせて頂きます。
「光電子®」は、体温域で効率よく遠赤外線をふく射する保温繊維です。
高純度微粒子セラミックスを、独自の技術により均一に繊維の中に練り込む事により
大きな表面積を持ち遠赤外線の吸収・ふく射作用を高めている、他社には無い非常にユニークな素材です。
リラクセーション効果・疲労の軽減、回復・快適な睡眠といった効果も確認されております。
私たちは、人々の美と健康に貢献したいという思いのもと、こうしたユニークな機能素材を展開しております。
「光電子®」については、インスタ(@kodenshi_jp)でも情報を発信していますので
ぜひフォローして頂ければと思います。
https://www.instagram.com/kodenshi_jp/
社長室 長谷享治
当社の紡績工場(以下、本社工場)では、衣料用から産業資材用まで
さまざまなタイプの糸を作っております。
そこで使用する綿花は、シーリーさんという、長年にわたり綿作に
並々ならぬ情熱を持ち続ける方の畑で、丹精込めて育てられた綿を使っています。
シーリーさんの所有する綿花畑の広さは、なんと
羽島市の2倍の面積、約10万㎡もあるのです。
写真の様に見渡す限りシーリーさんの土地なのです。
もちろん、お客様の希望があればさまざまな綿花を手配しています。
シーリーさんの高品質な綿を使い始めて、はや20年になります。
それには理由があります。
日本で例えるなら「お米」が解りやすいでしょうか。
よく、同じコシヒカリでも「魚沼産のコシヒカリ」がおいしいと言われます。
ですが、その裏にはその地域に合った品種改良がなされ、
土壌管理や水、肥料などを適切にやっているからです。
実は、私も農家なのでよく解ります。会社勤めをしながら稲作をすると、
休日しか作業が出来ない為に稲作がおろそかになってしまいます。
ましてや雨に降られたら翌週に延びてしまいます。
それでは、おいしい米が出来るわけありません。
こうして米作りの上手い人、下手な人の差が出るのです。
綿花も同じで、綿作に情熱をもってやっている人とは品質面で差が出ます。
つまり私たちは綿作が上手い人から高品質な綿花を買っているのです。
まさに契約農場みたいなものです。
シーリーさんとの最初の出会いは、今から20年以上も前のことになります。
年1回行われる綿花の国際的な会議(国際綿花諮問委員会)に出席した時に、
わざわざ日本の紡績会社が宿泊するホテルに訪ねて来られ、
その時に面談したのが弊社の綿花担当でした。
シーリーさんは「是非、日本の紡績会社に自分の畑の綿花を使ってほしい」と
お願いに来られました。担当者はシーリーさんの綿作における情熱に心を動かされ
「日本の紡績が希望する綿花について」、10年もの間、現地の綿花畑まで出向き
収穫場所毎のロット区分や綿のクリーニングの仕方を指導しました。
収穫が終わるとシーリーさんに来日頂き、実際に本社工場を見学され、
真心のこもった商品を見られ感動されました。
この様な親密な関係を築く事が出来、今日に至ります。
このような関係を築けた紡績会社は世界各国探しても他には無いと自負しています。
今では「HASE-1」とお伝えすれば、弊社の希望する綿花のグレード
(繊度、繊維長、強度、色)を供給して頂ける間柄となっています。
近年は地球の気候変動で、世界各地の綿作地で水不足に悩まされる年があります。
シーリーさんの畑も例外ではありません。収穫量が十分の一以下になった年もあり、
その様な時にも弊社向けに綿を確保して頂いた経緯があります。
前担当者はよく「コットンファミリー」という言葉を使われておりましたが、
まさにその通りです。
「2008年 前担当者とシーリーさんら関係者」
ただ単に綿花を買うのではなく、お互いを理解し良い人間関係を
築く事の大切さを感じました。
このご縁を私どもは大切にして、今後も良好な関係を継続してまいります。
そして、お客様にとってより良い商品づくりに、これからも
邁進して参りたいと思います。
(紡績部門 業務課 小笠原正人)